「なんだよそれー」
10月に入った。
机にうなだれているのは、あおい。
教室を半分にして、
女子たちと、男子たちに分かれて、
ただいま文化祭の出し物の話し合い中。
とりあえず、うちのクラスは喫茶店をやることは決まっていて、
あとは、
内容を詰めていくだけ。
「なんだよ『アイドル喫茶』って、
ふざけんな!」
あおいはかなりご立腹だ。
「だからね、他のクラスも喫茶店をやるわけよ。
うちのクラスが勝つには、女子たちのかわいさを使って、
客を呼ぶしかないって」
実行委員の中島さんは紙袋からキラッキラの洋服を取り出し、
みんなに見えるように広げた。
「これを、女子たちみんなで着ます!」
それは、よくアイドルグループが着ている、
制服タイプの衣装だった。
「マジか!!絶対嫌なんですけど!!」
あおいはギロっと中島さんを睨んだ。
……怖いよ、あおい。
「いいじゃん!私は、着てみたいけど」
「おもしろいじゃん。こういう時じゃないと、着れないしね」
「あおいだって、ほら、似合いそうだよ」
女子たちはやる気満々で、
あおいに衣装を当てた。
「あはははっ!!あおいかわいいって」
杏は手を叩いて爆笑した。
「あああ!!もう最悪!!」
あおいは机に顔を伏せた。
「ちなみに、一日目は、男子たちがホールで、女子たちがキッチン。
二日目は、女子がホール。
この衣裳を着るのは、二日目だから。
髪型とか、気合入れて、
みんなでやり合いながらってことで、
ね、水沢さんは大丈夫?」
「えっ……」
いきなり私に話を振られて、固まってしまった。
「転入生だからって、甘やかさないからね。
ビシビシ働いてもらうから」
中島さんは、ニコッと笑った。
なんだかその言葉がすごくうれしかった。
「うん。私……頑張る!」
「水沢さんこの衣裳超似合いそう!」
「結城くんが大変だよこれ」
「確かに……」
杏が腕を組んだ。
「これは、祥太が大変だ……」
うん、うんと女子たちが頷いた。