祥太は、背中のバッグを前に回して、
中から水色の箱を取り出した。
そして、何も言わずに、私の手のひらに乗せた。
「え……何?」
箱には白いリボンがしてある。
「開けてみ」
祥太に促されて、そっと膝の上で箱を開けると、
水色の小さな巾着袋があって、
中身を手のひらに出して見ると、
シルバーの小さなリボンがついたネックレスが出てきた。
「これ……」
祥太は自分の髪をくしゃくしゃっとした。
「俺……正直こういうのよくわかんないから、賢人に店聞いた」
私は、リボンの部分を指でつまんでみた。
「俺の小遣いで買えるぐらいだから、そんなに良いものじゃないけど」
そんな……
「もらえないよ……こんな……」
私はまた巾着袋に戻した。
「誕生日、5月10日だったんだろ」
誕生日……?
「ばあちゃんから聞いた。
16歳の誕生日は、何も祝ってやれなかったって言ってた。
いろいろあっただろうし……
遅くなったけど、16歳の誕生日を祝ってやりたくて……」
祥太は巾着袋を取って、中身を自分の手のひらに出した。
「後ろ向いてみな」
私は少し考えてから、
祥太に背中を向けた。
すると、目の前に、ネックレスが垂れてきて、
私が髪を左にまとめると、
祥太がネックレスをつけてくれた。
首の後ろを触られて、少しくすぐったくて……
「優衣」
祥太に優しく呼ばれたから、
髪を直しながら、祥太の方を向いた。
自分からはよく見えなくて、
指先でネックレスを触った。
「どう……かな?」
祥太は私をじっと見ると、優しく微笑んだ。
「よく似合ってる」
そう言って私の前髪をくしゃくしゃっとした。
「いいのかな……もらっちゃって」
「もらってくれないと困るんだけど」
祥太は、あはははっと笑った。
「ありがとう……祥太」
私は、ネックレスを両手で抑えた。
「祥太は?祥太の誕生日はいつ?」
祥太は、海の方を向いてまた足を伸ばした。
「教えねー」
「えっ?なんでよ……けち!」
「ぜってぇー教えねー。あはははっ」
「教えてよ!私だって、祥太の誕生日をお祝いしたいのに……」
私はぷくーっと頬を膨らませた。
「もう、優衣には祝ってもらったから」
え……
「だから、もういいんだよ」
祥太は私の膨らんだ頬を撫でて笑った。
「でも……教えてよ……」
祥太は私の両頬に手を当てて、首を傾げた。
「教えねぇって。
いつまでも聞いてくるなら、口塞ぐぞ」
間近で真剣な顔で言われたから、
きゅんとしちゃって……
「だって……っ…………」
頬を撫でていた手が、首の後ろに回って、
優しく唇を塞がれたかと思ったら、
だんだんと激しさを増して……
息が苦しくて、逃げようとしても、
追いかけてきて……
ふっと唇が離れたら、
頭の中がもう、
何も考えられなくなっちゃって……
まだ間近にある祥太の顔を、
頭がポーッとしたまま見つめたら、
「ダメだろ、そんなの……」って、
また唇を塞がれてしまった。