胸の前にある祥太の腕を抱きしめると、
ポタポタと、涙が落ちて、
祥太の腕を濡らした。
「ごめんね……
せっかく楽しかったのに……」
祥太は抱きしめた腕を強くした。
「泣きたくなったら、
何回でも、笑わせるよ」
祥太がそんな優しいことを言うから、
もっと涙があふれてきてしまった。
「私、祥太に会えてよかった。
生きていてよかった……」
私は、祥太の腕をぎゅっとした。
「俺も……
生きていて、
生きていてくれて、
本当によかったって思ってるよ」
祥太がそう囁いた時、
ザバーッと結構大きな波がきた。
「うわっ、やべっ……」
祥太は私から腕をほどいて、
自分の足元を見た。
「めっちゃ濡れた……」
膝までまくった、祥太のベージュのカーゴパンツが、
折った先まで濡れてしまっていた。
その姿がなんだかおかしくて、目をこすりながら思わず笑ってしまった。
泣いたり笑ったり……
私の顔を見て、くしゃっと笑った祥太が、
かわいくて、
祥太の笑顔がもっと見たくて、
私は、パシャッと水をかけた。
「ちょっ、やめろって」
私は、またかけた。
笑いながら逃げていく祥太をまた追いかけた。
そういえば、祥太と出会ったあの夏も、
川で水を掛け合った。
あの頃は、こんな風になるなんて、
思いもしなかった。
家族がいなくなることも、
祥太をこんなに好きになることも……
結局、祥太に腕を掴まれて、
手を繋いで、
波打ち際を歩いた。



