その後、英語を少しやったんだけど、
目が合うたびに、ドキドキしてしまって、全然頭に入らなかった。
「今日はここまでにするか……」
祥太は窓の外に目をやった。
「雨も止んできたし」
私も窓の外を見ると、さっきよりも空が明るくなり、
雨も小降りになっているように見えた。
帰りの支度をして、二人で下駄箱に行くと、
祥太は傘立てから一本のビニール傘を引き抜いた。
「賢人のがあった」
祥太の持っているビニール傘の持ち手には、
【けんと】と、黒く大きな文字が書かれていた。
「ほんとだ……いいの?」
「賢人も俺の使ったりしているから、大丈夫だよ」
そうなんだ……
祥太は玄関から出て、ビニール傘を開いた。
「家まで送るから……入んな」
えっ……私……
まっ……いっか。
「うん……」
祥太の差す傘の中に入ると、
二人一緒に歩き出した。
本当は、バッグの中に折り畳みの傘が入っていたんだけど、
祥太ともう少し一緒にいたかったから。
祥太の差す傘の中に入りたかったから。
それは内緒にしておこうって、肩に掛けたバッグの持ち手をぎゅっと握った。