「これ……」




祥太はキーホルダーからゴムをはずして、


私の手のひらにある、緑色の石を囲むように、そっと置いた。




「ずっと持っててくれたの?」



少し汚れた髪ゴムを見て、涙があふれてきてしまった。



「最初手首につけていたんだけど、学校ではそうもいかないから、


いつも持ち歩いている鍵につけてた。


だからちょっと汚れちゃったんだけど」



祥太は私の手のひらから石をつまんで、



教室の蛍光灯にかざした。


「懐かしいな……」




そしてまた、私の手のひらに置いた。


祥太は髪ゴムを取って、またキーホルダーにつけていた。




「次会うまで持っててって言われたけど、

これ、俺もらっていい?」



そんな……もう古くて汚れているのに。





「俺にとっては、すげー……




大切な物だから」



ポタポタと、窓の外の雨みたいに、涙が落ちて、

止まらなくなってしまった。



私はまた、あの日と同じように、


石を握ったまま、手の甲で涙を拭った。






祥太……





あの日の私たちは、まだ小さくて幼かったね。




こんな風にまた出会って、


こんなに好きになって、



祥太と恋をするなんて、



想像さえできなかったほど、



私たちは幼かった。





祥太は涙を拭っている私の手首を引っ張った。



「私、泣き過ぎて、ひどい顔してるから……」




掴まれた手を引っ張り返そうとしたら、


ぐっともっと引っ張られた。






「キスしていい?」






下から上目で見つめられて、泣き顔の自分がもっと恥ずかしくなった。


「だから……今、泣き過ぎてって…」



「だから?」



祥太は顔を近づけてきた。



「だから……恥ずかしくて……」



祥太は私のおでこに、自分のおでこをくっつけた。





「そんな理由聞けない」






手首を掴まれたまま、

柔らかく唇を塞がれて、



一度ふわっと、唇が離れたと思ったら、


また、塞がれて……



何度も繰り返してくるから、



唇も舌も、



感覚がおかしくなってしまって……





キスが終わった後は、


もっともっと恥ずかしくなってしまって、


火照った顔を石を握ったまま両手で隠した。