祥太は、あおいの椅子に後ろ向きに座ってきた。
「じゃあ……やるか。
まず、数学からやろう」
私は頷いて、教科書とノートを出した。
祥太は、普段も優しいけど、勉強の教え方も、
優しかった。
ペンを持つ手も、
教科書を差す指も、
男らしくて、
その指が自分の教科書に伸びてくるたびに、
ドキドキしてしまった。
「こうなるだろ?」って、
下からちょっと上目で顔を覗かれると、
目を合わせていられなくなる。
ちょっと垂れ目で、
黒目が大きくて、
両腕を私の机に乗せて、
私が問題を解くのを待って、
できた瞬間、目の前でかわいく笑うから、
顔が熱くなってしまった。
数学が終わったところで、
祥太が立ち上がった。
「ちょっと一休みしよう」
祥太はそのまま教室を出て行ってしまった。
……トイレかな?
しばらく待っていると、祥太がパックジュースをふたつ持って、戻ってきた。
「コーヒーと紅茶どっちがいい?」