「約束」涙の君を【完】




体育館から教室に戻る時も、二人は一緒にいてくれた。



周りにジロジロ見られたから、あおいと杏が嫌じゃなかったかなって、

少し気になった。




教室に入り席につくと、あおいはこっちを向いて座り、

杏は私の隣、祥太の席に座った。




「祥太呼び出しくらってる」



あおいが廊下を見て言ったから、私も廊下を見ると、

祥太と賢人くんが、女子たちに囲まれていた。




「わかってると思うけど、祥太ってすごいモテるから。


T大の教授の息子だし、あそこの大学の卒業生が、

この辺の林業に結構就職していて、みんな使える奴ばっかなんだって。

だから大学のイメージが良いみたいでさ。

大学の研究所のトップが祥太のお父さんってわけ」




大学のイメージが良い……



あの頃は、この辺の人たちに良く思われてないって悩んでいたのに……




よかった……




みんなに理解してもらえたんだ……


「私と杏は、中学から祥太と一緒だったんだけど、最初はチビでさ」



あおいの言葉に杏が頷いた。


「そうだった、あいつチビだった!

賢人の方が人気あったのに、いつの間にか背が超伸びて、賢人と並んで。


そしたらいきなりモテ始めた気がする」



杏の言葉に、今度はあおいが頷いた。



「結構告られていたけど、みんな断っていたよね。


でも、あいつだけはめげないね……」



あいつ……?





二人して廊下を見たから、私も廊下を見た。



「祥太の前に立っている背の高いショートボブの女いるでしょ?」



ショートボブ……あ、いたいた。


周りの子よりも一番祥太の近くにいる子。

ちょっとキツそうな……

「あいつは小学校から祥太と一緒らしいんだけど、


祥太が大好きで、何回も告って何回も振られてもめげないね。


うちらは友達として祥太とつるんでいるのに、

いきなりトイレに呼び出されてさ。


ま、うちらは言い返して黙らせたけどね



うちらみたいに、祥太に近づく奴は呼び出して集団で締めてくんだよ」



こ、怖いな……

「あいつ、金持ちっていうか、この辺では有名な地主の一人娘なんだって。


祥太の大学の土地も、元々あいつんちの土地だったらしいよ。



名前は、東条陽菜(とうじょう ひな)



優衣、あいつにだけは気をつけな」