「なんだよ複雑って。
想像以上に男たちにモテモテだったとか?」
祥太はふっと笑って下を向いた。
「それもあるけどさ……」
「ほら、移動だ!移動!
そうだ、結城、
来週、夏休みの課題の確認テストがあるだろ。
その範囲の勉強を水沢に教えてやってくれ。
頼むな」
祥太は立ち上がった。
「はい、わかりました」
「あおい、体育館行こ」
祥太と先生のやり取りを見ていたら、あおいにひとりの女子が声をかけた。
「あ、待って。優衣も一緒に行こ」
あおいが私のバッグをぽんぽんと叩いた。
一緒に、いいのかな……
「一緒に行こ。
私は大塚杏(おおつか あん)
声が出るようになったら、杏って呼んで。
早く行こ、優衣」
杏……
優しいんだな……
あおいも杏も背が高くて、綺麗な人……
あおいは黒髪のストレートで、
杏は、茶髪の巻き髪で、ちょっとヤンキーっぽいけど、
私が立ち上がると、ニコッと笑ってくれて、
「ブラウスの一番上は開けちゃいなよ」
って、
ボタンをひとつ開けてくれた。
「まさか女子には妬かねーよな?」
賢人くんが祥太にそう言うと、
「だから妬いてねぇーって。
体育館行くぞ、賢人」
祥太は自分の髪をくしゃくしゃっとしながら、賢人くんと教室を出て行った。



