この薬を飲むと、いつも眠くなってしまうのに、
今回は、眠くならなかった。
祥太が出て行ってから、おばあちゃんはずっと、
ベッドに腰掛けて背中をさすってくれていた。
私はだいぶ落ち着いてきたから、
口元からタオルを外し、枕元に置いた。
このタオル、うちのタオルじゃない……
スポーツブランドのロゴが入った紺色のハンドタオル。
『薬とタオルは俺……常に持っているようにするから』
本当にいつも用意してくれていたんだ……
祥太は私のことをいつも支えてくれて、
優しくしてくれて、
それなのに……
祥太が大変な時に、私はこんなことで動けなくなってしまって、
情けない……
行かなくちゃ、私も探しに行かなくちゃ。
そう思ってゆっくりと体を起こすと、
頭がクラクラとして、思わずこめかみを抑えた。
「あぁぁあぁ……まだ横になってろ。
祥太も待ってろって言ってただろ?
連絡がくるのを、ばあちゃんと待ってろって」
肝心な時に動けない自分が、情けなくて、
悔しくて、涙が出た。
太一くん……どこ行っちゃったの?
戻ってきて……お願い。
また横になるしかなかった私の背中を、
おばあちゃんもまた、優しくさすってくれた。
しばらく横になっていたら、
家の電話が鳴り、おばあちゃんが部屋から出ていった。



