祥太は「落ち着いて、落ち着いて」と言いながら、
電話をしていた。
落ち着いてと言いながら、祥太も焦っている様子だった。
「わかった、俺も探すから」
探す……?
電話を切ると、祥太は手を繋いできた。
「ごめん、帰ろう」
祥太は私の手を引いて、
人混みの中を掻き分け、急いで元の来た道を戻った。
なんのことだかわからない私は、
駐輪場に着き、祥太が自転車に乗ったところで、
腕をつかんで首を傾げた。
「あ………
太一が川に遊びに行ったまま、まだ帰ってこないんだ」
太一くんが………
私が急いで後ろに乗ると、祥太は自転車をこぎ出した。
背中にしがみつきながら、ぎゅっと目を閉じた。
怖かった。
帰ってこない
帰ってこないって……
お母さんとお兄ちゃんが帰ってこなかった日が蘇ってきた。
どうしよう……
警察署で見た別人のような二人の姿を、思い出してしまった。
太一くんが……どうしよう……
はぁ……はぁ……はぁ……
一気に不安が押し寄せて来た。
気づくと、いっぱい息を吸いすぎてしまっていて、
頭が痛くなってきてしまった。
私も探しに行きたい。
しっかりしなくちゃ……
家に着き、自転車から降りると、庭先におばあちゃんが懐中電灯を持って立っていた。
「じいちゃんは、川上の方を探しに行った。
祥太は川下の方を探しに行け。
ばあちゃんと優衣は神社の方へ……
優衣?おい!優衣?」