ある時代ある場所
乱れた世の片隅
少年は生きるため
盗みを覚えていった

醜く太った大人達などには
決して追いつけはしない風の様に
今空腹を満たすのがすべて
是も非も越え ただ走る

清らかなその心は
穢れもせず罪を重ねる
天国も地獄さえも
ここよりましなら
喜んで行こう
「人は皆、平等」などと
何処のペテン師のセリフだか
知らないけど


パンを抱いて逃げる途中
すれ違う行列の中の
美しい少女に
目を奪われ立ち尽くす

遠い町から売られて来たのだろう
俯いてるその瞳には涙が
金持ちの家を見届けた後
叫びながら ただ走る

清らかなその身体に
穢れた手が触れているのか
少年に力はなく
少女には思想を与えられず
神様がいるとしたら
何故僕らだけ愛してくれないのか


夕暮れを待って 剣を盗んだ
重たい剣を引きずる姿は
風と呼ぶには悲しすぎよう
カルマの坂を上る


怒りと憎しみの切っ先をはらい
血で濡らし
たどり着いた少女はもう
壊された魂で微笑んだ
最後の一振りを少女に
泣くことも忘れてた
空腹を思い出してた
痛みなら少年も
ありのままを確かに感じてる

お話はここで終わり
ある時代のある場所の物語


(カルマの坂/ポルノグラフィティより引用)