「おそらちゃん…だったよね?」

原田さんが耳元でそういう。

「あ、はい。」

「じゃあ、聞いていい?」

「いいですよ。」

「なんで急に出て行ったの?
なんでこんなところで働いてるの?」

ードクン

「え……なん…で…」

なんで分かるの…?

「…やっぱりね…」

「っ………」

「俺を誰だと思ってるの?
それぐらい分かるよ…」

「…原田さん…」

「こんなところで働いてるってことは帰る場所なんてほんとはないんでしょ?
帰っておいでよ、屯所に」

「…無理…です。」

「なんで?」

「あたしの帰る場所はあそこじゃないから…」

「空、少なくとも俺たちは君が帰ってくることを願ってる。」

「…っそんなの…信じれるわけ…」

「信じたくないなら無理に信じろとは言わない。
だけどね、心配してたんだよ、みんなが」

「…え…」

「総司なんて……未だに夜になると泣いてる。」

「おきたさんが…?」

そう言うと原田さんは静かに頷いた。

煩い部屋の中、何も聞こえなくなって、あたしは一粒涙をこぼした。