「…斎藤さん…」

振り向くと斎藤さんが立っていた。

「……どうした?」

…言えない。くだらないこと考えてただなんて…。

無理…というか恥ずい。

そして引かれる。確実に引かれる。

「あー…えっと…」

誤魔化そうとするがなかなか言葉が出てこない。

「引かないから言ってみろ。
お前は顔に出やすい。」

だけどそんな小細工斎藤さんには無駄だったみたい。

「…桜の木のこと…考えてたんです。」

「…あぁ、あの木か?」

「はい。
咲くときはみんなみてるのに、枯れていくときは誰も見向きもしないじゃないですか。」

そう言って笑う。

「…ん?それは矛盾してないか?」

「…矛盾?」

「現に、今俺とお前はこの木を見ているだろう?」

「…はい…そうですけど…」

そういいかけると、斎藤さんはそれに…と付け加えて言った


「来年咲くために今散っている。
人間と同じだ。
咲くために努力する。」

咲くために…努力……。

「…そんなもんなんですかね?」

「…まぁ、考えればわかるんじゃないか?
俺はもう寝るが…」

「あ、引き止めてしまってすみません。」

「いや、俺が話したかっただけだ。気にするな」

そう言って斎藤さんは部屋へ戻った。