来たのは晴香だった。
「秀、何やってんの?
 もうすぐ試合でしょ」
晴香は香澄をちらっとみた。
香澄は目をそらした。
「・・・」
秀はためらったが、
試合という言葉のせいか、
何も言わず立った。
一歩踏み出そうとしたとき、
秀は香澄の肩を軽くたたいた。
(えっ・・・)
秀は優しい人だったんだ、と改めてかすみは思った。

ある日、カギ当番が香澄に回ってきた。
ワークルームの窓・ドアなど全てきっちり閉めて職員室にカギを返すという、まさに面倒くさいものだった。
しかし、そのカギ当番をサボったり、1つでも閉め忘れがあれば、一週間部活が停止になってしまう。

香澄は放課後、みんなが出たのを確認し、窓とドアを閉めた。
香澄は出れないが、
もうすぐ試合で、みんな一生懸命やっているので、絶対停止にはしたくなかった。
だから香澄は何回も閉まっているか確認した。
ドアのカギを閉め終わり、香澄は職員室にカギを返した。