と思ったら五時間目が始まる直前、急に教室が華やいで、アイツは姿を現した。

 奈々を見ると、居づらそうにしてる。

 それなのに、寿にとってそんなことはどうでもいいらしく、

 奈々の前なのに他の女の子たちと仲良さそうに喋ってる。


 「今までドコにいたの~ぉ?」

 「夢ん中」

 「どんな夢見たの?」

 「一緒に寝てみる?」

 「こっ寿くん……」


 カッチーンッ!!


 私は座っていたイスを膝で静かに押しどかし、ゆっくりと席を離れた。


 「彩並くん、ちょっと」


 怒りを殺しきれないまま言ったのに、寿は涼しい顔。

 人の気持ちを何だと思ってんのっ!!

 って怒鳴りそうになったけど、それだけはグッと堪えた。


 「長くなるんでしょ? 授業終わってからにしない?」


 それは、寿の口説き文句。

 いいじゃん、乗ってやろうじゃん!?


 「家に連れてってくれるの? みんなみたいに」

 「来たければな?」

 「是非招待してよ」


 笑って言ってやった。

 余裕の顔で。








 彩並寿、教えてやるよ!!

 奈々が味わった辛さを、その身を持って体験させてあげる。