ホテルに行ってみようかな―――

 そんなこと思ったけど、掃除用具を片づけていたら、ケータイがバイブし始めた。

 あ! 鷹槻さん!!


 「鷹槻心貢ですが、少しお時間いただいてもよろしいでしょうか?」

 「はいっ!! 大丈夫です」


 寿のことかな。

 緊張感がもの凄い勢いで高まってくる。


 「実は今、学校の前まで来ています。ドライブにつき合っていただけますか?」

 「ドッドライブ!?」


 デートじゃんこれっ!!


 「大……丈夫です……」


 どうしよう―――

 鼓動が一気に跳ね上がって、身体の中で反響して、すごいうるさい。

 ドキドキしてる場合じゃないのに。

 待たせちゃいけないと思って、私は急いで学校の外に出た。

 うわぁスゴイ。

 鷹槻さんがいるらしい駐車場に行ったら、見慣れない車を見つけて目を奪われた。

 ピカピカっていうより艶やかで、ボディは全体的に丸みを帯びていて滑らか。

 リップグロスを塗った唇みたいに細かな輝きを放つ、深みを帯びたアッシュグレー。

 車詳しくないから分からないけど、こんな車見たの初めてだ。

 二枚の翼のオーナメントがまたカッコイイ。

 見取れて立ち止まってたら、右側のドアが開いた。


 「すみません岡崎様。気づきませんでした」


 申し訳なさそうな色を混ぜ込んだ柔らかい微笑みが、

 車の中から出てきた鷹槻さんの顔に浮かぶ。


 「カッコイイ車ですね!!」

 「ありがとうございます」


 鷹槻さんはエスコートして私を助手席に乗せてくれた。

 緊張するなぁ……

 座り心地のいいイスに座って、膝の上に置いたスクールカバンのヒモを両手で持ってじっとしてた。

 右側にいる鷹槻さんの存在感が大きくて、手に汗かいてきた……

 今日は何で誘われたんだろう………


 「岡崎様」

 「はっはいっ!!」


 ビックリして全身に力が入る。

 鷹槻さんの横顔が、ふっと壊れて僅かな笑みが宿った。


 「寿が動揺するのも分かりますね」

 「どっ動揺ですか!」

 何言ってるの鷹槻さん!!