「三年間、取り戻そう?」


 涙に濡れた美希の顔が大人びた表情を宿す。


 「どうやって?」

 「寿の気がすむようにすればいい」


 美希の言ってることが分からなかった。


 「だけどその前に、奈々に正直に打ち明けて」

 「何を」

 「唯夏さんのこと」

 「…………大丈夫か?」


 新山は見るからにか弱くて、精神も脆弱だ。

 今、唯夏のことなんか知ったら、どうなる?


 「おっと!」


 手を引っ張られて、俺は危うく美希の上に倒れこみそうになった。

 美希の顔は俺のちょうど、胸のあたり、多分。

 ギリギリで腕ついたから、接触はしてない。

 腹を押し上げられたから左の方に身体を流す。







 「もう歯車は回りだしちゃったよ」


 俺に背中を向けて床に立った姿が、さっきまで大泣きしてた女と同じとは、到底思えなかった。