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次の日の早朝、俺は高校を中退したときから借りているアパートを出て実家に向かった。最近、頻繁に実家に帰ってるなーと思いながらも上機嫌に鼻歌を歌いながら車に乗り込む。
運転席に座り、車を20分走らせれば家についた。
母さんと王子は仕事に行ったためにもうないらしい。俺は余計な口を挟んでくる人がいないし、チャンスだと思い真っ先に胡桃の部屋に向かった。
遠慮なくドアを開くと、いつものように部屋着姿でスマホを触っている妹がいた。こちらに一度視線をうつし、再び画面に戻す。まるでこの場に俺がいないような素振りだ。
「くーるみ」
「...。」
「学校行こーよ。」
「...。」
「いじめにあってるわけでも、嫌な事があるわけでもないんでしょ。」
「...。」
「...しょうがないなぁ。」
何を言っても無駄なら、強行突破するしかない。俺は布団を引き剥がし、スマホを奪いとると胡桃の両手を掴んだ。突然の行動に吃驚して目を見開いた胡桃を気にすることなく力いっぱい引っ張るとベッドから転げ落ちそうになる。
落ちる前に、俺は胡桃の両脇に腕をいれてそのまま持ち上げ「はい、いくよー」と軽快にいえば胡桃の眉間に明らかに皺が寄った。
ジタバタと暴れる胡桃を無視し、洗面所に向かう。鏡の前に降ろして、「歯磨いて、顔洗って。」と言ったけど無反応。
俺は溜息を一つつくと、歯ブラシに歯磨き粉をつけて胡桃の口に突っ込んだ。諦めたのか、やっと自分で歯を磨きだした。その間に制服と鞄を用意して持っていくと、先ほどよりも眉間に皺を寄せて俺を睨みつける。


