「睨むなって。」
「...。」
「前向いてて、髪セットしてあげるから。王子よりは下手だけど我慢してねー」
髪を櫛でとき、アイロンをしてまっすぐにしていく。寝起きのボサボサの頭から綺麗なストレートになった。
歯磨きと顔を洗うのを終えた胡桃に制服を渡せば、投げ返される。「おっ」それをキャッチし、今度は強引に胡桃の手に持たせれば人を殺せるんじゃないかと思うような鋭い目つきで俺を見てくる。
「怖いって。」
笑いながらそう言えば、胡桃は小さく舌打ちをしてからバァン!と洗面所のドアを勢いよくしめた。どうやら着替えるようだ。うん、俺しつこいから着替えるまでずっと構い続けるし。
5分後、ゆっくりとドアが開いた。久しぶりに制服を着た胡桃は俺を無視して部屋に戻ろうとする。「そっちじゃないって。」
手首を掴んで引き留めて、反対側の手で胡桃の鞄を持ち引っ張って車まで連れて行こうとした。けれど、胡桃は本気で嫌なのか力で俺にかなうはずないのに未だに部屋に戻ろうとしている。
「ねえ、何がそんなに嫌なの?」
「...。」
「理由言ってよ。そうしたらまた皆考えが変わるかもしれないよ。俺も、強行突破はしないから、ね?」
「...高校中退したアンタに、言われたくない。しね。」
「...。」
静かにイラッときた俺は無言で胡桃を担ぎ、そのまま車に強制連行した。後部席のドアをあけて中に鞄と一緒に放り込み、運転席に乗り込みドアをロックする。
放り込まれたときに頭を打ったのか、手で頭をおさえて痛みにたえている。
久し振りに聞いた声がそれかよ。
内心毒づきながらも何も言わずに車を走らせた。目ざすは、高校の入学式以来行っていない学校。


