ダイヤの恋人 〜June bride〜

ホテル内のレストランで夕食を済ませた後、部屋に戻って帰国の準備をした。


「貴島瑠花さん」


「……は、はい」


突然畏(カシコ)まった理人さんに、戸惑いながらも返事をしたけど…


慣れない名字で呼ばれる事が照れ臭くて、つい視線を逸らしてしまう。


「あの……」


「ごめん、ただ呼んでみただけなんだ」


「……からかったんですね」


喉の奥でクックッと笑う理人さんを恨めしげに見上げれば、謝罪の言葉とともに「反応が可愛いからつい」なんて返って来た。


ずるい……


幸せそうにしながらそんな風に言われたら、怒る事も拗ねる事も出来ない。


「まだ慣れないみたいだね」


理人さんはクスクスと笑いを零しながら、あたしの頬にキスをした。