【日時:4月29日 AM10時より】
【場所:ハートの彫刻前】


それは【Yes】と答えてからすぐに知らされた。

なんと、隣町だと。
運がいいのか悪いのか。

なんにせよ、思ったより遠出しなくても済みそうだ。



「さて、と……。こんなもんかな」



引きこもり人生を約半分。そして私は今日、久々に家を出る。


終焉 ーデスー ゲームに参加するために。


たったこれだけの用事で出掛けることになるなんて、とも思ったが、これは、これだけは行かなければとどこか義務を感じていた。


持ち物はノートパソコンを入れただけの、ぺったんこのリュックサック。

さすがに久々の日射しということで、服装はフードパーカー。フードを被れば日射しも気になるまい。

目立たないよう、色は灰色。
黒って案外目立つからね。灰色の方が私として酷く好ましい。


中に着ている服はよれよれのプリントT-シャツに、だぼだぼの七分丈ベージュパンツ。

兄のお下がりなもので。
男っぽい上にサイズが一回り大きい。


ま、いいや。
ゲームに参加するだけだし。



「あ、もう電車出る時間だ」



慌ててリュックを掴み自分の部屋から出て一階へと下りる。

そのとき丁度母と出くわしてしまう。



「あ、え………」

「………いってきます。お母さん」

「っ、ええ、い……いってらっしゃい」



どこかぎこちない雰囲気ながらも挨拶を交わす。ああ、いつぶりだろう。


こうして、誰かと現実(リアル)で話すのは。

こうして、“家族らしく”話せたのは。


少し干渉に浸っていると、そろそろ時間が本格的にやばくなってきたため駆け出す。


がちゃん、扉の閉まる無機質な音。


それすら、私にはとても新鮮なものに感じてしまった。