だるまさんが鬼になった


ごくりと唾を飲み込み、一歩一歩と随分ゆっくりとした歩調で【ハート】に近づく。何を石如きに怯えているのかと笑われそうだけども。

この【ハート】は決してただの石じゃないからだ。少なくとも、私にとっては。

怯えつつも【ハート】の前まで近づき、手を伸ばしながらしゃがむ。手にとって見れば、やはり冷たい石。

だけれど、私には温もりが感じられた。


ふと、思い出したように石の裏を見ようともう片方の手で石を持ち上げようとする。

けれど、


「なっ、うわっ、落ちる落ちる落ちっ……。イッテー!」

「……。」


ガサガサッと音がしたかと思えば、私のすぐ隣にドシンッと大きな音を響かせて落ちてきたと思われる“ソレ”。

“ソレ”による思わぬ妨害で、私は持っていた【ハート】を思わず落としてしまった。

土の上にコテンと転がり、その歪(いびつ)な形にしては勢いよく転がっていく【ハート】は、その勢いのままに“ソレ”の近くまで転がっていった。


「イテテ……、ん?なんだこれ?【ハート】の石…?」


頭を抑えてうめく“ソレ”は、【ハート】に手を伸ばして掴もうとする。

その前に、私は叫んだ。


「触んな!」

「えっ、え……、え?!」


その声に反応して体を震わせた“ソレ”とは反対に、私は【ハート】を掴んで目の前で硬直する“ソレ”を睨む。


“ソレ”は私と同い年くらいと思われる、頭に葉っぱをつけた青年だった。

多分、さっきガサガサと音がしたのは隣にたつ大木から落ちてきた音だろう。その証拠に、頭の上の葉っぱ。


私が睨みつけながら【ハート】を両手でぎゅっと握りしめていると、尻餅をついていた葉っぱ青年が私を指差してきた。

正確に言えば、私のもつ【ハート】を。


「それ、君の?」

「……、私のであって、私のじゃない」

「何それ。…って、いうか、君。男?」


おそらく私の格好を見てだと思うけれど。フードのせいで顔が見れないからだと思うけれど。対してパッと見わかるような胸ではない貧乳のせいだと思うけれど。


「女と男の違いくらい分かれよこの不潔野郎。社会の窓オープンしてんじゃねえですよ」

「は?!……うわっ、俺はずかしっ!」


私に蔑むような目で見られた葉っぱ青年は慌ててズボンのチャックを閉めた。

……、青のストライプか。