茂はノートパソコンのモニター画面を見ながら、音声の編集機器を弄っている。


静かな部屋にキーボードの音が反響し、真上には首吊りのような輪が垂れている。それは今まで見たこともない、妙な光景だった。


恐怖よりも好奇心に勝てないメンバーが茂の元へ集まる。全員が全員前屈みになり、茂の次の声を待った。


「いいかい、音を大きくしてみるよ。さっきは咄嗟過ぎて、良く聞こえなかったんだよね」


周辺機器の音量の摘みを捻り、ノイズのような音が漏れた。


――ゼンイン・ゾ・ウ・モ・ツ――


「ねぇ。挨拶? どうもって言った?」


「茂、もう一度繰り返してみて。違うよ直子、これは……」


――臓物。


今度は皆の鼓膜に、はっきりと届いた。