父親なんて姿さえも覚えていないくらいで。 お母さんは、棗さんがアルバムを残してくれていて、優しく育ててくれていたのはなんとなく覚えているけれど。 私にとって幼いときからの記憶は、棗さんとの思い出ばかりだ。 「棗さん……――あ、叔父さんなんですけど。棗さんはいつだって私を優先してくれて。たくさんの思い出を与えてくれたので」 普通の家庭よりも、ずっとずっと。 私は、棗さんに大切にされてきた。 大切に、育てられてきた。