初恋の人―Hatsukoi no hito―




振り返ると、今年の梅雨は中途半端で終わりを迎えた。

7月となり、季節は夏になった。



「篠束君、これ」



「ありがとう。聖奈」



あれから数週間、私は弘瀬に笑えなくなった。

本人に“弘瀬”と声を掛ける事もなくなった。

それでも私を“聖奈”と呼ぶ弘瀬に、イライラする事もあった。

試合に向け、ハードになった練習に、エースの一員である弘瀬も汗の量が増した。