涙を堪え、上を向く。

さっさとお握り運んでくれれば良いのに…。



「紗槻が、嫌だって言うし。最初のうちは、言う事を聞いとくべきだと思って…」



弘瀬が“紗槻”と彼女の名前を呼ぶ度に、胸が居ない。

視界が歪むどころか、ぼやけて先が見えなくなる。



「…ごめん、聖奈」



謝罪は、聞きたくなかった。

限界だった。

ラップをそっと置き、涙を見られないようにして家庭科室を出た。