初恋の人―Hatsukoi no hito―

心配で、何もする事ないのに離れられない。



「久しぶりに名前で呼ばれた」



隣に座り、笑顔なく弘瀬をジーっと見る。

やっぱり、鈍い。

弘瀬はかなりの、超が付く鈍感だ。

さっき、私の気持ちに気付いてくれたと思ったのに…。



「馬鹿」



「成績が上がったからって、いきなり何だよ」



「馬鹿だから馬鹿って言ったの」



バケツの中に手を入れ、弘瀬の手首をそっと掴んで持ち上げる。