浅い呼吸を繰り返す上司の唇に
視線を落とす。



ーーー手をだしてしまった…


しかも、意識の無い人に。


柏木なら、まだしも…

俺は何をやっているんだ?


まだまだ…社会人としては
半人前にも満たないのに


こんなことだけ、一人前で。
自分が情けなくなる。


ため息を、ひとつついて
スマホを操作し、神島を呼び出す。


RRRRRRRR…
RRRRRRRR…


妙に呼び出し音が
長く感じてーーーー
ムカつく。


『どうした?斐川』

不思議そうな、神島の声

「おまえ、冷蔵庫にチョコレート
隠しているだろう。もってこい。
ダッシュでな。」

『キサマ…その口の聞き方
年下の自覚ゼロだろう!?』

声を噛み殺し、怒りをぶちまける
神島は、いいオモチャだ。

「社会に出れば、お前も柏木も
ただの同期って事だよ。」

ガサガサ紙袋を漁る音がする。

『イチイチ言うなっ
分かってるっ
…つか、たまにチョコが
減ってるのは、貴様のせいだな。』



「それは、柏木だ。
俺は洋菓子は食わない。」

脂肪が増えると困るなんて
未だに考えてしまう。