『…別れたって、おそらく
ご両親の話でしょ?』

人事部長の反応は分からないけど
柏木の声で分かる。

…今、ヤツは優位に立っている。

『この間、うちのヤツが
名刺作成、失敗したでしょ。
俺、回収したヤツ
見てるんですよね。

レンって…人事台帳では
“恋”でしょ。
カノジョの本名…ですよね?
俺も多分周囲も“蓮”だと
聞いてた訳ですよ。

それに加え、
貴方の名前は“恋次”

いまどきの子供ならまだしも、
そう言う年代じゃない事を
念頭に考えれば…

“恋”被りする理由なんて
そんなに無いでしょ?』

どこぞの名探偵ヨロシク
理論をぶちまける柏木に
ちょっと、感心してしまう。

『やるなぁ。バレたか。
キミの同期は見事に
ひっかかってくれたぞ。
個人的には、ああいう素直な
ボーズが、義弟に望ましい。』

人事部長の愉快そうな声に
若干、ムッとする。

…貴様のオモチャになど
なってやるものか。

…まぁ…その未来は、もう
選択肢に無いのだけれど。

そんな事を思い出しながら
観客席で小さく手を振る
カノジョに小さく頷いた。