『…俺の年齢のせいですか?…
…それとも…関連会社の俺では、
守秘義務とか気になりますか?』

その重々しい表情に、
俺にしては珍しく、不安を隠せず、
部長を問いただしてしまえば。

『そうじゃない。音村は、例え、
ライバル会社の人間と結婚しても、
守秘義務は遂行する奴だってのは
分かってる。…そもそも、
アイツが業務時間以外に、好んで
仕事の話なんざするわけないだろ。』

そういって部長は笑う。

『柏木の本気も、今の話で理解した。
ワシが心配してるのは、もっと別の
話だよ。』

腕組みした部長を、奥様の方が
俺より怪訝そうに見つめていた。

『…あなた?』

黙り込んだ部長を、奥様が促す。

『…いやなぁ…個人情報だから
詳しくは言えんが、音村は家族構成が
ちょっと複雑でな。あの兄貴を
黙らせる事ができるのかと…な。
…柏木を以ってしてもなぁ…

お前の同期は、きっちり洗礼を
受けた様だしな。』

心当たりがある様で、部長は苦笑した。