今年、啓太から
誕生日祝いにもらった
バッグに荷物を詰めて、
襷がけにし、コートを後にして
駅に向い歩き出す。

広葉樹の隙間から差し込む
木漏れ日を見上げながら、
何と無く、重い身体を
引きずり歩く。

きっと、こんな気分なのは
今朝、見てしまったから。

一駅ジョギングしようなんて
思わなければ、よかった。

きっと、見なかったに
違いない。

駅近くにある有名ホテルへ、
うちの部長と一緒に、
音村係長が入っていくところを。

快活なイメージの中にも、
清楚さを感じるワンピース姿。
あの様子から、披露宴や
パーティでは無い事は明白だ。

音村係長の表情は硬かったし。

俺の推測では…
見合じゃないかと思っている。
…佐藤係長のこともあるし。

多分…週頭の2人の会話も、
今朝の事に関係しているはずだ。
定時近くの会議室から
“絶対イ―ヤ―だぁっ!!”と
音村係長の、尋常じゃない
大絶叫が漏れていたし。

仮に見合いだとしても、
自分に止める権利もなければ、
そんなポジションにもいない。