「この間、親父から聞きました。
あの人、再婚するって…」

――――ああ…

本当にテルテルが再婚するんだ……

遠い声のムコウ側で、
妙に、実感する。

「俺たち…親父と結婚するのは
音村さんだって、ずっと、
思ってたんですけど。」

…長い将来の事を考えて、
私たちは、お付き合いを
しなかったのですよ。
お互いを選ばなかったのだよ。

「そうよ。ママだって
音村さんなら許せるって
言ってたのに、蓋を開けて
ビックリですよ!!」

おいっ!?元嫁っ!?
私は、元嫁の発言の方に
驚くわよ!!

どんな信頼を
寄せてくれてるのよ…

でも…有難く
受け取っておきます。

二人の思いに苦笑しつつも
こうして、真意を確認しに
来た事に、ちゃんと
応えなければ…と、思う。

「確かに一時はね、あったよ。
付き合っちゃう?みたいな時期は。

でもね、結婚して
こっちにも子供が出来て…とかね、
老後遺産で揉めたりってなったら
…とかね…考えたらね。
あなた達を含めた、テルテルとの
関係が、変わる事が怖かったの。

皆を嫌いになる未来は
欲しくなくて、皆を好きな
自分でいたいっていう
偽善的な自分に負けたんだと
今では、思ってる。

何も始まっていないのに、
マイナスの可能性が、
少しでもある事が、当時は
どうしようもなく怖かった。
例えそうなっても、
打開策なんかもあるって事にも
考え及ばなかった。

それで、2人のお父さんと
付き合うって事は
選ばなかったんだよ。」