パソコンの電源を入れ
デスクの引き出しの鍵を
開錠する。

収容データが重い為か
立ち上がるのに若干時間が
かかるのだ。

「あ。そぉだ。」

外出前に、総務から
届けられた白い小箱を
引き出しから取り出す。

補充用の名刺を頼んで
おいたのだ。いつもなら
もう少し時間がかかるのに
案外早くて驚きだ。

箱から名刺を適量抜き出し
バッグの中から真っ赤な
名刺入れを取り出す。

「…あれ?」

違和感を感じ
名刺を一枚手に取り
シゲシゲと見つめる。

「うげっ!!!」

思わず叫んだ私に
周りの視線が突き刺さる。

「あ…すいません…」

ペコペコ頭を下げて
苦笑するが、笑い事では
ない。

…どういうことだ…?

起こりえないハズの出来事が
起こっているではないか!!


一身上の重大な事情により、
名刺と社内文書は、“音村蓮”という
通称表記使用をお願いしていると
いうのに…

手元のおニューの名刺は、
まさかの本名“音村恋”とか…
あり得ないし!!

え?理由?

…恥ずかしいからに
決まってるじゃないっ!!

このキャラクターで名前が
“恋”だなんて!!
自分自身が青ざめるわよ…


…そして…


漢字表記の上にふられた
英語のルビ…


“love sound village”


…誰だよ!?



誰だよ!?



イタズラ書きすんの!?


…悔しいけど…


なかなか、上手いじゃない。