「ほら、もう。レンちゃん
早く靴、履いてよ!!」


突如、意識を引き戻した声


床にピンヒールを並べ
“ほらぁ…足の裏
真っ黒じゃん”等といいながら
スポーツバッグをガサゴソ漁り
ウエットティッシュを
取り出す女子力満載の
その男は


「斐川君。神島君も。
おかえりなさい。」


そういって、俺たちを見上げ
ニッコリと笑みを浮かべた。


「ただいまっす。」

そう答え、こぶしを合わせる
神島を横目にしながら、
啓太に、事の顛末を
どう説明しようかと言葉に
つまる。


「斐川くん。」


啓太の声に、ハッとする。

「あ…ああ。ただいま。」

「帰ってきてくれて、ありがとう。
これ、また使うでしょ。」


そういって、差し出された
スポーツバッグをノロノロと
受け取る。

見かけに寄らず軽いそれの
ファスナーを開ければ

「ああ、ボール…」


預けてあったボールと一緒に
可愛くラッピングされた
タオルやTシャツ等が
入っていた。


「それは、復帰祝い。
これから忙しくなるんだから
洗濯もままならない日もあるよ。
着替えは沢山あったほうが
いいと思って。」

細かい事は何も言わず
友人は、そういって、ただ
ニッコリ微笑むのだった。