「リヒト、お前は
いい加減日本語で話せば
どうなんだ。お前の英語は
聞き取りにくくていかん。」


私たちのやり取りを聞いていた
会長が、不満気に眉間に皺を
寄せた。

…は?日本語?

…聞き取りつらいか云々は
ネイティブだから別として…
と、いう問題ではなく…

日本語ですかぃ?!

「ああ…もう。親父、言うなよ。
見ろよ。レンの不機嫌な顔。
色々遣り辛いじゃないか。
この後も諸々あんのに。」


お前?!喋るのか?!
日本語を話せるのか?!

はあっ?!


「ほら、レン。君達、
俺たちと交渉が出来る程
英語が堪能だろ?俺だって、
アメリカの方が長いし
英語の方が楽だったんだよ…
って、もう、戦闘モードだな(笑)」

お手上げとばかりに両手を挙げる
仕草をするリヒトに会長が
身振りだけで退室を促す。

「もう、お前は外しなさい。
お前には、敵わんよ。
話がややこしくなる。」


「親父も中々酷いねぇ?
俺よりレンのご機嫌を選ぶんだ。」

「当たり前だ。彼女は
うちの社員なんだからな。」

「あ、そう。じゃあ、
レン、また後でね。」


そんな軽口を叩きながら
扉の向こうへ消えるリヒトを
呆然と見送る。