…落ち着かない…
何度か訪れたことのある
会長の執務室だけど…
フカフカの絨毯と
訳の分からない緊張感に
会長を待つ数分ですら
気分が超絶に萎える…
珍しいからと言ってキョロキョロ
周りを見渡すわけにもいかず
姿勢を正してソファセットで
待機しているのだけど
硬直しすぎて肩が凝ってきた。
…もう帰りたいんですけど。
「待たせたね。」
そういって入室した会長は
秘書に席をはずすように
ヤンワリ指示を出して
セレブ感漂うソファセットの
向い側に腰掛ける。
その隣に腰掛けたリヒトに
一瞬、瞳孔が開きかけたけど
何とか堪え、平常心を装う。
「…いえ。大丈夫です」
そんな短いやり取りから
始まったのは、当然ながら、
今回の業務提携の着地点の事と
私の異動の話だった。
「…では、弊社から移管する業務は
海外を拠点にする企業との業務提携
及び合併統合に関するコンサルに
限ると?」
私の確認を断ったのは
リヒトだった。
『そう。法人規模によっては
この国は世界の判断速度に
ついて行けずに有益な協定が
結べずにいる。
そこに我々が介入する。
俺たちは多国間の事業も
得意としているからね。
君と輝也の狙い通りだ。
これからレンと俺が
纏める話は、業務移管の仕上げと
弊社の日本支社設置に関する
建物賃貸借契約の締結だ。
早々に軌道にのせる。
半年でまとめるぞ。』
そういって、ニヤッと笑う。



