軽い二日酔いの残る翌朝
出勤早々、エレベータホールで
会長秘書に呼び止められる。


「調度よかった、音村さん。
荷物を置いたら、会長の執務室へ
お越しください。

……お呼びですから。」


クソ狐が。挨拶くらいしろよ…


忙しそうに、この場を立ち去る
後ろ姿を見送りながら、
唇を尖らせる。


「…高い空だな。」


無意識のうちに、
窓の外に広がる青空と
ガラスにうっすら映る自分を
ぼんやり眺めていたことに
気がついて、溜息を一つ落とす。


「やば…」

急がないと。
会長を待たせてしまう。

あの方は、お忙しい身だ。
お待たせするわけにいかず、
デスクへ向かうべく歩き出した。