『何が不満なんだ?』


心底、不思議という表情で
リヒトは俺の狼狽ぶりに
目を見開く。


『不満じゃない。ただ、何で
そこまでしてくれるのか
戸惑っているだけや。』

そう、答えれば。


『ああ、そんな事か』


そういって、リヒトは
クスクス笑う。


『俺も母親を一人で住まわすのは
心配だし、陽一郎もこの先1年は
サポートが必要な状況になるんだ。
そして、それは母の性分にも合っている。
ギブ&テイクって事でいいじゃないか。
ホームステイだと思えば。』

『でも、日本には弟が…』


そもそも弟と一緒に住んでいた部屋も
実家の仕送りと折半で暮らしていた。
俺の給料では、日本の家賃と
こちらでの生活費両方を負担することは
厳しい。


『うちでのステイの件は気にするな。
お前一人増えた所で、生活費なんて
たいした影響は無いよ。逆に、うちの母親の
傍に居てくれるってんだから、俺に
とっては、釣りが要る位の話しだよ。』


“だから、安心してその膝治せよ”


そう、リヒトは言う。