『陽一郎、ちょっと。』


リヒトに呼び出され
俺は会議室へ向かう。


『適当に座って。』


そう言われ、扉の一番近くの
空席に腰掛ける。


『レンと親父から、例の件、
回答があった。』


転籍の件…


『OKが出たよ。驚いてたがね。
転籍を希望したのがお前で、
真琴が戻るって結論を
出したって報告にはね。』


…まあ、そうなるよな。

俺に至っては、残留の
気持ちの方が、ずっと
大きかったからな…


『それでだ。』


リヒトから聞かされた事は
神島と斐川の今月末での帰国と
社宅扱いとしていたシェアハウスの
解約、それに伴う俺の退去だった。


『陽一郎、お前は、退去したら
うちの実家に来い。そこで下宿だ。』

『はっ?!』

業務命令さながら告げられた
居住場所に驚く。


『何で!?』


『何で?だと?
解りきった事じゃないか。

今のお前に“日本支社”を預けるには
まだ、ノウハウが不足している。
その習得に最低でも1年はかかるだろう。
しかも、お前は、膝のオペを受ける。
リハビリには同じくらい時間が
かかるって言うじゃないか。

俺の実家なら、生活面でも経済面でも
お前のサポートは万全じゃないか。』



当たり前のように、そう
リヒトは言う。