『シュン。相手は
選ばなきゃ上達しないよ。
今晩の相手は、最高だよ。
間に合えば、俺も参加する。
ヨウイチロウが素直に
捕まるように祈っておいてよ。
じゃあ、また、あとでね。』
『ああ。』
彼は笑みを浮かべ
颯爽と事務所を
出て行った。
…きっと、
斐川の為に
対戦相手を
募ってくれたんだろう。
“シュンと…
ヨウイチロウ…だよね?”
ここへ赴任した初日
リヒトに連れられ、内心ビビリながら
この部屋に足を一歩踏み入れた。
なんとなく部屋を見渡す俺達に
一人のアフロ系の男が
デスクブースの間を縫う様に
駆け寄ってきた。
“体ができあがってるから
一瞬誰だかわからなかったよ。”
俺の中のアメリカ人像と
正反対に位置するシャイで謙虚な
雰囲気を醸し出すそのオトコに
戸惑う。
“ああ…すまない…
キミ達は僕の事など覚えていない
ってこと、忘れていた。”
頭を掻きながら苦笑する
その姿は、好感を持てるけど。



