啓太に腕を引かれたまま
三匹をふりかえる。


「じゃあ、三人とも
また明日ね。

明日出発なんだから、
風邪引かないようにね。」


駅と反対方向へ歩き出す
私たちに、彼らは、
軽く会釈をして背を向けて
歩き出す。


男の子のガッチリした背中―――


明日、もう一度
彼らの背中を見ることになる。


…もしかしたら、もう、
再び彼らのそれを
見ることは無いかもしれない。


…もしかしたら


再び、迎えることは
出来ないかもしれない。



その姿を見送りながら
目じりに溜まった液体を
指でそっと拭う。


同僚が足を止めたのは、
オフィス街の小さな公園だった。


「はい。到着。解散。」

「え?何ここ??」

戸惑い、声を上げたテルテルに

「ん?見たまま、公園だよ。
寒空の下外飲みするなら
コンビ二は、あそこにある。」

と、国道沿いの建物からつきだす
行灯看板を指差した。


「この通りを進めば、地下鉄の
入り口だよ。一駅程度だけど、
あいつらと違う電車に乗る
程度の時間は稼げるだろ。

じゃ、俺は帰るから。
佐藤も音村も、好きなだけ
ウジウジしてから
帰んなさい。」


“啓太、音村送ってやってね”
そう台詞を残し、同僚は
手を振り踵を返す。


…相変わらず
行き届いたオトコだ…


「よし。寒空の下、
一杯だけひっかけるぞ。
啓太、悪いけど、パシって。」

同僚の背中を見送りながら
テルテルは、財布から
お札を出して啓太に
渡している。

「お釣りは、やるよ。」

「おおっ♪オヤツは300円まで
買ってもいいですかっ?!」