部長の乗ったタクシーが
見えなくなって、三匹が
こちらを振り返り、
私とテルテルの言葉を
待っている。

今にも震えそうになる声を
根性で堪える。

自分に出来る最高の笑顔を
浮かべて、口を開く。


「明日、空港まで
見送りに行くから。
今日は、ここで解散。」


そう締めれば、三人は
何か言いたそうに
していたけれど、
それぞれの顔を見遣り、
“はい”と、素直に頷き
最寄駅の方角へ歩み始めた。


このまま一緒に駅まで行けば
堪えきれない涙が零れそうで
どうしたものかと考えあぐねた時


「音村、佐藤、もう一軒
つきあえよ。」


三匹と啓太の後ろを、
重い足取りで並んで歩く
私とテルテルに同僚が声を
かけてきた。


「ああ。軽く行こうか。

啓太、お前も来い。
幹事引受けてくれて
ありがとうな。」


一瞬怪訝な表情をした啓太だけど
私たちの同僚の顔を見て
何か悟ったのだろう。


「いいっすね♪行きましょ♪
ほら、音村係長、行きますよ。」


そういって、私の服の袖口を引く。


…キミの行動の一つ一つが
乙女なのだよ…啓太クン…