でも…振られてたよな…
反応に困る俺を他所に
斐川は誰に言うともなく
言葉を紡ぐ。
「いま、此処を後にする事に
ついては、何も思い残す事は
ない。」
“後は、持てる全てを駆使して
やりきるだけ”
そう、自分に言い聞かせる様に
斐川は呟いた。
そうだよ。
俺たちは、やりきらないと
いけない。
それぞれが抱く…少なからず
抱いている虚無感とか…
後悔とか…悔しさとか…
成仏させてこなけりゃ
いけない。
ーーー俺たちは
悪く言えば、
大人になりきれて
いない。
しかも、当然、各々が
自力で脱却すべきソレを
会社がさせてくれようと
している。
…そのチャンスを
上司がもぎ取ってきてくれた。



