「あ?神島くん。
こんな所でどうしたの?
また、誰かサボってるの?」
不意にかけられた
のほほんとした声に
ハッと、我に返った。
目の前には、フニャリと笑む
総務部のチビッコがいて。
咄嗟に、階下にいる斐川を思う。
俺に振られた現場を
抑えられたと知って
しまったら?
その上、自分の友達にまで
知られてしまったら?
心なしか、階下が
ザワザワしている気がする。
「お。スゲエじゃん。
5段降りたら、目線合うんだ(笑)」
ちょっと可哀想なネタだけど
階下にいる2人に気付かれるより
余程気まずくないよな…
瞬発的に判断して
目の前のチビッコをからかう。
「ひでぇ(泣)3段だよっ!3段!」
「あ。ホントだ。
でもまぁ、大差ねえじゃん。
それより、どこか行くの?」
話題を変える。
「あ。そだ。皆の所に
行くところだったんだ。
来年の手帳が届いたから
配布しに行くの。」
チビッコの両腕に抱えた箱を
視界に捉え、掻っさらう。
「あっ。」
「俺が持ちます。
デカイけど後輩なんで(笑)」
早くこの場から離れたい。
気持ちのまま、サッサと
歩きだせば。
「ありがとう。って、待ってよ!
みんな、コンパス広いから
歩くのが早いんだよぉ。」
背後から、パタパタ
追いかけてくる足跡を
聞きながら、敢えて歩速を早めた。



