「よし。…じゃあ、
斐川くん、行きますか。」
「はい。」
車のキーと財布を持った
嫁…否、真月さんが
やってくるのを視界に捉え
椅子から立ち上がる。
この地獄月間、気持ちばかり
ではあるが、月謝を
手渡したのだが、
結局受け取る代わりに
夕食を毎度ごちそうに
なっていた。
…その買い出しの付添い等
お易い御用なのだ。
あの日、啓太が探してきた
英会話の指導者が、真月さん
だとは、思わなかった。
“俺のギター講師の嫁”…と言う
キーワードで気づくべき
だった。
渡航迄の期間を考えれば
いたしかたない指導内容と
スケジュールではあったが…
かつて、現在の住まいから
程近い、一部上場企業に
勤めていたというだけあって
プレゼンを想定した課題等、
指導内容は、とても、的を
得ていた。
また、通信回線を利用した
打ち合わせ等、啓太は
白目を剥いていたが、
俺は現実的な教材として
とても頼りになったのだ。



