火照って緩む表情筋を
認識しながら、図らずも
入手した電話番号を
大事に登録する。



…電話してもいいのだろうか?


…業務用端末にかけるような
内容ではない用件であれば。

ドキドキしながら、
考えるけれども…

そもそも、そんなプライベートな
用件など無いではないか。


“レンちゃんに、教えて
もらえば?英語”

いつかの啓太のお気楽な声が
脳裏に響く。


…今週、出勤できないと
言っていた。


…と、いう事は、今週…って
チャンスじゃないのか?
アドレス帳を開いたまま
邪念に翻弄される。

画面では、早く入力しろとばかりに
カーソルが点滅していて。


“音村”…と、打ちかけたけれど

消して“レン”と打ち直した。


誰が見ている訳でもないのに
歓喜の声をあげることすら
恥ずかしくて、セルフレームの
眼鏡をはずして、枕に顔面を埋め
知れずと、にやける自分を戒めた。