「…斐川、向こうで話そうか。
ここじゃあ話せないから。」



…は?…えっ?


いや、場所を変える事は
差し支えないが…何をそんなに
慌てているのだろう?

全く、何に考え至っていると
いうのだろう?

佐藤係長は、ミーティングルームの
空室状況を確認して、いそいそと
俺を押し込み、一瞬目線を
彷徨わせた。


「…で、感想は?」


…はっ?…感想?
感想ってなんだ?

普通に、絶不調そうだったが。

「…いや…まあ…。
普通じゃないですか?
あんなものじゃあ無いでしょうか。
…初日なんだし。」


そう答えれば、ますます
係長は衝撃を受けた様子で。

…いや、ギックリ腰なんて
あんなものだろう?
俺は、未経験だが。


「初日って。…初日って…
まさか、ずっと付き合って
いくのか?…あの音村が…」


…音村係長は、確かに
それこそ一見は、俺たちとそれ程
年齢は違ってみえないけど…

ギックリ腰にくらい誰だって
なるんじゃないのか?

…そんなに狼狽えなくても。

「…あの…佐藤係長…?」


戸惑いながら、問いかけた
俺の声など、もはや、
耳に入らない様子で。

愕然とした上司を、ただただ
どうしたものかと、
ひたすら、様子を見守るだけだった。