「…柏木…おまえ…。」


動揺を隠しきれない
斐川が言葉をなんとか紡ぐ。

多分、混乱のなか、
俺と渡り合える情報戦を
画策してるんやろう。


「なんや?」


そう言って、何とか
笑みを取り繕うけど
本心を晒せば、とっくに
そんな余裕など消え失せている。


でも…今は、ほんのすこしも
引けを取るわけに行かない。


「…いつまでも、ココに
いる訳にいかんやろ?
移動しよか。」


「ああ…。そうだな。」


先に、ここを出た方が
多分、負ける。


…レンちゃんの気持ちを
さて置いた状態であれども。


彼女は、きっと、現状では
誰も選ばんやろう。


それなら…安いケンカ
吹っかけるより
一緒に立ち去る方が正解や。