sound village




全く、羨ましい限りだと
ポンポンとその髪を撫ぜれば


手首をそっと捕まれる。


チカラをいれている訳では、
決してないのに
大きな掌が、完全にロックして
振りほどけない。


「…無防備に、

触れないでください。

俺は…色々…
我慢しているんですから。」


そう言って、眼鏡越しに
伏せられた瞼に釘付けになる。


…なんつう…色気だよ。


去年まで大学生だった男子に
思えないんだけど…


「あの…」


「ん?」


完全に色気に当てられ
つい、プライベートな応え方を
してしまう。



「好きです。

…俺、音村係長のことが好きです。」



掴まれたままの手首から伝わる
斐川くんの体温が妙に熱くて


「きっと、今日を逃せば、
伝えられないと思ったから…

すいません、今日は帰ります。」



“好き”で、止めたのは
彼の優しさなんだろうか。


“好きだからどうしたい”と
希望や見返りを求めないのは
自分が、ここに未練を残さない為の
告白だったからだろうか?


“ちゃんと鍵閉めてください”

そういって、苦笑を携え
部屋を後にした彼の後姿を
閉まった扉越しに見送りながら
溜息をひとつ落とした。