「心配せんでも、斐川は
アメリカへ行けるよ。
たぶん、レンちゃんとテルテルが
悩んでるんは、残りの一枚の
切符や。」


柏木は、スポーツドリンクの
蓋を閉めながら続ける。


「俺が思うに…リヒトが
ほしかったんは、お前だけや。
俺と神島は、あの時、向こうで
使えへん…て、判断されたからな。」


…聞いたことがある。

今でこそ、柏木は、またプレー
しているけど、コイツは
向こうで相当な故障をしたと。

「じゃあ…今回の二名って
選出は…」


「もし、お前が向こうで
選手としてやれるとなったら
辞めるやろ?その時の保険と
違うかな。」


淡々と分析しているけど…
腹立てたりしないのだろうか?

「…保険って…それが
本当にあたっていたら…
失礼な話しじゃないか…」

思わず呟けば


「アホやな。斐川は。
経費で新入社員を研修に出して
ソイツが辞めてみ?
レンちゃんもテルテルも
どうやって責任とるねん?

“表面化してないだけで、
あの人らがやろうとしてるんは
経費でお前にバスケする機会を
与えようとしてるんやで?

それが露見したら、どうなるか位
お前にかて、わかるやろ?」

スッと流してきた視線に
何か覚悟の様なものを感じる。